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ステージに立つと声が出なくなるという心の病を抱え、NYから舞い戻ったボーカリストの未知子。かつて「火星の土地」を分譲するなど夢多き人生を送ってきた父・康平は「人間の悩みなんて宇宙から見ればちっぽけさ」と未知子を明るく励ますが、そんな康平が突然脳梗塞で倒れてしまう。未知子は帰国を延期して康平の介護に当たり、離れに住む司法浪人の青年・透も未知子に協力する。いつしか魅かれていく2人だったが、その一方、康平を介護施設に入れようとする姉・久仁子との確執もあらわになっていく…。 □キャスト紹介 □メイキングギャラリー □日本宇宙旅行協会とは? □「火星のわが家」年代記 □劇場用予告編(wmv)
火星の土地の売買って知ってますか? 今でもたまにテレビのバラエティや何かで興味本位に取り上げられるので、ご存知の方もいるかと思いますが、実際に1950年代後半にそういうトンデモ商売をやっていた団体があって、物好きなうちの父もその権利証を持っていました(10万坪で1000円だったそうです)。そんなことはすっかり忘れてたんですが、1996年くらいに、NASAが火星の石から生物の痕跡を発見したとか、日本でも探査機が飛ぶとかでちょっとした火星ブームが起きまして、その時に火星の土地権利証のことを思い出したわけです。もし人類が本当に火星に行けたとしたら、その権利証で土地の所有権を主張できるんだろうか?てなことを考えつつ、シナリオを書き始めたわけですが…。 今顧みると、この作品は、自分なりの20世紀への葬送曲だったように思います。自分が育ってきた20世紀後半はまさにSFブーム真っ盛り。21世紀は科学万能の時代で、すべての夢が叶うように信じ込まされてきましたが、実際はそんなことはありませんでした。でもあの時代、未来という言葉はすごくまぶしかったし、宇宙旅行というのは、そんな輝かしい未来の象徴だったのです。「未来」を夢見て前向きで生きていられたあの頃が、確実に「過去」のものになってしまったという喪失感は、恐らくあの時代を知っている人のほとんどが感じていることではないでしょうか。 この作品の舞台となった神山家は横浜の丘の上に実際建っていた一戸建てで、城井さんというご夫婦が住んでいらっしゃるところを無理を言ってひと夏お借りしました。築30年の生活感もさることながら、宇宙船のような丸窓がすごく素敵だったのですが、残念ながら作品の公開とほぼ同時期(2000年)に取り壊され、今はありません。映画そのものは、表向きは鈴木重子さんのほわんとしたキャラクターのおかげで、至って穏やかな体裁を保ったまま流れていくのですが、全体を通して見ると、現代を生きるわれわれの無常観のようなものが、かなり濃厚に出てしまっているかも知れません。
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