真綿の首飾り

(2001年上演/約120分)

[スタッフ]
作・演出・映像:大嶋 拓
音楽:寺嶋由起
照明:清水朋久
音響:マインドケア
宣伝デザイン:不破朋美

[キャスト]
タカシ:横塚進之介
トモコ:椎木透子
ミキ:中山 香
ユキヒコ:桝谷 裕
看護婦:藤原ヨシコ

売れっこマンガ家のトモコと、彼女の影で世間から隔たって暮らす気弱な弟タカシ。トモコのアシスタントのミキと次第に心を通わせていくタカシだったが、そんなある日、トモコは突然交通事故に遭い、意識不明になってしまう…。姉と弟の心に潜む危うい相姦関係をじわじわとあぶり出した初の舞台作品。2001年3〜4月にアイピット目白で上演され好評を博した。

□「真綿の首飾り」フライヤー

   

作り手のコメント

演劇はずいぶん前から挑戦したかったジャンルでした。私の映像作品は、基本的に日常的でさらっとしたものが多いので、たまには「赤いシリーズ」みたいな思い切りドロドロしたものをやりたかったのですが、そういうドラマは映像ではなく芝居でやった方が自分の中では成立すると思ったわけです。クサくて長いセリフは、映像で見せられると「あちゃー」って感じですが、芝居だと場の力で押し切れてしまうのではないかと。どういうわけか「映像は日常で芝居は非日常」という感覚が、当時の自分の中にはあったのです(観客の目の前で演じられているという点では、演劇の方がはるかに日常に近いはずなのですが…)。トモコのセリフで「表現者は幸福になったら終わり、私たちは永遠に孤独よ」なんていうのがあるのですが、こういうのは映像で言ってしまうとストレートすぎて引いてしまうというか。

初舞台の感想としては、「映画は監督のもの、けれど芝居は役者のもの」と言われているわけが何となくわかった気がしました。映像はNGが出れば撮り直しが可能ですし、気に入らないシーンは編集でばっさりカットできますが、芝居は幕があがったらすべて役者まかせ、演出家は指をくわえて見ているしかありません。「何でリハーサル通りにやらないんだよ!」と随分やきもきさせられましたが、そういう、コントロールできることが限られていて、きわめて水物的要素が大きいところが、演劇の怖さであり、魅力でもあるのでしょう。機会があったらまたチャレンジしてみたいと思っています。