水のほとり

(2005年/ステレオ/53分)

[スタッフ]
原作:青江舜二郎
脚色・演出:大嶋 拓
サウンドプロデュース:熊 義樹
音楽:宮川章彦

[キャスト]
流離王:日下武史
摩訶南尊者:柳澤愼一
釈迦族長老:川久保潔
梵僧好苦:松永英晃
青年奢摩:泰 勇気

舞台は紀元前5世紀のインド。仏を生んだ釈迦族は、隣接するコーサラ国の流離王(るりおう)から襲撃を受け、今まさに滅亡の危機に瀕していた。かつて流離王の父は釈迦族から妃をめとり、そして流離王が生まれたのだが、釈迦族が差し出した妃は実は奴隷女で、そのことを後から知った流離王が、復讐と領土拡大のために攻めてきたのだ。仏の助力も当てにならぬとわかり、騒然となる釈迦族たち。そんな時、一族の最長老である摩訶南(まかなん)尊者は、ある決意を胸に、流離王の元へ最後の交渉に赴くのだが…。今なお世界のあちこちで人々を戦争へと駆り立てる、それぞれの「正義」のありかたを見事に描き出した声の歴史劇。


作品ダイジェスト



作り手のコメント

青江舜二郎生誕百年記念作品として「実験室」とカップリングで製作されたボイスドラマです。声だけで重厚なドラマを創り出すため、演技には定評のある大ベテラン勢にご協力を仰ぎました。まず流離王役には劇団四季の日下武史さん。「オンディーヌ」「ひばり」「アンチゴーヌ」など数多くの舞台でさまざまな「王」を演じてきた演劇界の重鎮です。私は「火星のわが家」でも大変お世話になりました。また、摩訶南尊者には、50年代に日劇レビューやエノケン劇団で歌手・俳優として一世を風靡した柳澤愼一(柳沢真一)さん。「奥さまは魔女」のダーリンの吹替えでもおなじみです。そして、摩訶南とともに流離王と論戦を繰り広げる釈迦族長老は、NHK朝のテレビ小説などの語りや数多くのアニメで活躍するベテランで、青江の鎌倉アカデミアでの教え子でもある川久保潔さん。他にも若手声優の注目株である泰勇気くんなど個性豊かな演技陣が顔を揃えました。

声だけのドラマというのは、小中学生のころに従兄とラジカセで「独眼龍シリーズ」という推理ドラマもどきを作っていたことはあるものの、それ以外の経験は皆無で、いわば素人も同然。映像作品以上のプレッシャーを感じながらスタジオ入りしましたが、ベテラン勢にサポートしていただき、本番はつつがなく終了しました(と言いつつ、慣れないキュー出しでだいぶご迷惑をおかけしましたが…)。収録の際は、セリフのある人が代わる代わるマイクに近づき、言い終わるとおもむろに離れて…、というボイスドラマ独特の動きも初めて見ましたし、ラストに全員で「ガヤ」(群集のガヤガヤ言う声)を録るのも新鮮な体験でした。

 DVD発売:2005年6月24日 タクラマカンパニー/新日本映画社