火曜日の約束

(2006年/HD/10分)

[スタッフ]
監督・脚本・編集:大嶋 拓
プロデューサー:露木栄司
撮影・照明:三本木久城
録音:宋 晋瑞

[キャスト]
凛子:鈴木宏美
秋沢:矢柴俊博
凛子の母:五十嵐さゆり

気分が落ち込むことが多くなった28歳の凛子は、メンタルクリニックで軽いうつ病と診断され、半年ほど治療を続けている。しかし、凛子の中では何も変わっていないように思われた。ひとり部屋の中で自分のポートレートを撮り、それをコミュニティサイトにアップして、仮想的な人間関係の中でつかの間の満足に浸る凛子。しかしその一方、医師の秋沢に、言葉だけではなく受け容れられたいという理不尽な欲求も、いつしか胸の中で膨らんでいく。凛子の心は病気なのか。それとも、いい年をした大人の「甘え」なのか…。


作り手のコメント

最近石を投げれば当たるんじゃないか、というくらい罹患者が増えた「うつ病」にまつわるお話。私の周囲にも何人かいる、悩める妙齢の女性をモチーフにシナリオを書き上げました。半年後に撮影を控えていた「凍える鏡」のプロットタイプ的作品です。メンタルヘルスを扱った内容がリンクしているのをはじめ、機材も同じハイビジョンカメラを使用、スタッフも、一部はそのまま「凍える鏡」にスライドしています。

診察室のシーンで、凛子が、一切の身体接触を禁じるカウンセリングというもののあり方に疑問を投げかけるシーンがあるのですが、あれは、「凍える〜」のシナリオ執筆の過程で生じた私自身の「?」でもありました。手を握る、肩を抱く、頭をなでるといった何気ないふれあいが、空しい言葉のやりとりをはるかに凌ぐ心の満足をもたらすことは、日常でもしばしば体験することです。しかし、この作品の医師は、「手を握って欲しい」という凛子の申し出を断固として拒むのです。まあ、たしかに密室ですし、間違いが起きることを医師が恐れる気持ちはよくわかるのですが…。とにかく、「凍える鏡」と密接な関係にある短編で、凛子を演じた鈴木宏美さんも、「凍える鏡」冒頭のフリーマーケットシーンにしっかり顔を出しています。