39-19

(2002年/DVカム/95分)

[スタッフ]
監督・脚本・撮影・編集:大嶋 拓
音楽:寺嶋由起
EED:三本木久城

[キャスト]
ユリ:東ヶ崎絵理
田代:桝谷 裕
三波:木越 優
みちる:福田里菜
史郎:八木正純
事務員:中尾貴宏

映像製作の専門学校に通う19歳のユリは、かつての援助交際の相手だった田代と街で再会する。肝臓がんで余命1年と宣告された田代は会社を辞め、残された時間の使い道を思案中であった。田代はユリに、身の回りの世話をしてくれれば、手元にある退職金500万円の残額を、自分の死後すべて与えると話を持ちかけ、同時に自分をモチーフにしたドキュメンタリーを撮ることを提案する。ユリは田代のこの申し出を受け、こうして「金」と「作品」を媒介にした、39歳の男と19歳の少女の不可思議な契約関係が成立していく…。
2003年3月に中野光座にて特別上映、翌2004年10〜12月にネットロードショーされた。

   

予告編



作り手のコメント

この作品の撮影当時、私は田代と同じ39歳で、まさに人生の真ん中あたりにいるつもりでした。しかし、自分と同年代の俳優や文筆家が、相次いでがんで亡くなるのを目の当たりにし、死というものは意外と近くにあるのではないかという気がしてきました。また、過去を振り返れば、太宰治や三島由紀夫といった私の敬愛する文学者も、40歳前後で世を去っています。私自身は今のところ持病はありませんが、もし自分があと1年の命と宣告されたら、どんな「余生」を送るのだろう。そんな想像がこの作品を生み出すきっかけになりました。そんなわけで、田代というキャラクターには、私の偏向した性格や、今まで公に語ることを避けてきたネガティブな本音がかなり反映されていると思います。

 

そんなこちらのエゴを受け止める相手として19歳の少女を選んだというのは、恐らく、若さというものが内包する無知と柔軟性が、ある種のワクチンになると感じたからでしょう。ユリ役の東ヶ崎さんと死に関する話をした時、彼女はまだ近親者を看取った経験がないので、死を身近かに感じることができない、と言いました。それを聞いて私はふと、もし自分が誰かに看取ってもらうなら、死というものをまだ知らない人がいい、死に対してある種の先入観を持っている人に、いろいろ気を遣われながらそばにいてもらうのは気が重いと思ったのです。そういった彼女との会話やメールのやりとりなどから、田代とユリの微妙な関係が少しずつ構築されていったわけです。