堺 雅人  

七変化のカメレオンな男

小劇場から飛び出したプリンス、堺雅人。
だけど、大げさ芝居もなく、むしろあっさり系。
髪型が変わるたび、シチュエーションが変わるたび、
まったく別人に見えるから、なんか不思議だ。
セクシーぬきの、おとぎの国風美男さんです。

文=寺本直未 撮影=鷹野政起

※「この映画がすごい!」(宝島社)2000年2月号より転載
堺 雅人  
「火星のわが家」の堺クンは、マッシュルームカットとつるんとした生足が目に飛び込んでくる。いわゆる男臭さを感じさせず、年齢不詳のさわやかなムード。CX「海ごはん山ごはん」という、一切しゃべらずに自然の中でお料理するドリカムもどき……みたいな番組があったの覚えてる? そこで彼は、「こんな同居人いたら、あっさりさらさらハッピーだよね」という雰囲気を漂わせていたのだった。映画の中でもまさに、そう。

「最初に監督にお会いしたときに、なんか僕の深いところまで語ってしまったんです。会った途端に、そんな深いところまで他人に話したのは初めての経験だったんですよ。優柔不断なところとか、監督とは共通項があって、その後脚本をいただいたら、そんな部分が折り込まれて書かれていました」

「小劇場のアイドル」とうたわれる彼は、この作品で映画初出演、準主役。司法試験を目指す青年・透役を演じ、精神的に傷ついたヒロインの離れに住む同居人、という距離感にこよなくハマっている。この撮影が行なわれたのは98年の夏だそうだけど、撮影の待ちも長く、透みたいにぼーっとしていたことも、効をなしたとか。

「でも、試写を見たら僕自身よりも透は生々しくてピックリしたんです。生々しいというのは、なんでもないシーンでも、何かエロティックな空気が漂っているように見えるんですよね。その見たことない自分や映画の雰囲気に感動して、今は胸がいっぱいです」

彼がヒロインに一生懸命マッサージしてあげると、スゥスゥ彼女が寝てしまうというシークエンスがほほえましかった。ちょっと吉本ばななの小説を思わせる世界観。想いを寄せるヒロインのお姉さん(ちわきまゆみ)と関係を持ってもくったくない感じがするのは、堺クンのつるんとしたカワイさゆえでしょ。
生まれ育った宮崎の進学校で勉強ばかりの毎日に矛盾を感じ、何かおもしろいことないか、と探して演劇部入り。そこで表現する楽しさに目覚めた堺クンは、早稲田大学に入学するやいなや、東京オレンジ(早稲田劇研)で活動を始めたという。シュールなパントマイム表現なども行なう劇団なのだそうな。

「舞台では狂気に満ちた役も、やっています。そんな役のために髪を伸ばした後でこの作品に入ったから、美容院へは監督といっしょに行きました。監督は僕の髪が長すぎるって、心配してたみたいですね(笑)。あとは、最初に『棒読みみたいに芝居して』と言われたのが印象に残っています」

映画を見る限りでは、長髪にして狂気に満ちた役を濃く熱演する堺クンなんて想像しがたいんだけど、役や手段にこだわらず何でもチャレンジしてみたいそう。一見実年齢より若い感じがするけど、考え方が大人だよねー。賢いと見た。美男はひと一倍賢くなきゃ。
ホームドラマにハマる若手男優は少ないけど、彼ならそんな直球も投げられそう。映画デビューはストライク!


(この文章は、「この映画がすごい!」の「美男の森」コーナーに掲載されたものを転載させていただきました)
(C)宝島社 2000


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