T ディベロップメント(企画開発)

映像作品を作るに当たって、どのくらいの規模で、どういうものを撮るか、という青写真を描く最初の段階です。題材が決まったら、まずプロット(あらすじ)を起こし、それをふくらませてシナリオを執筆します。まだスタッフもキャストも決まっていない場合が多く、かなり孤独な作業になります。しかしその反面、マイペースで進められるため、人間関係的なストレスにさらされることが少ない時期でもあります。


 2004年1月10日(土) すべてはこの日に始まった

昨年末にカメラマンの三本木久城さんが撮影で参加した短編映画「隣人観察日記」(監督:笹木彰人)のプロデューサー小村幸司氏と電話で話す。彼は若手・中堅監督の短編作品を50本揃えて世に出す企画「Q」(仮)を立ち上げており、すでに数本が撮影を終えているとのこと。低予算ながらかなり作家の自主性を尊重しているとの話だったので、私も是非参加したいとの意向を示すと、彼は「企画書やプロットよりシナリオを見せてもらった方が結果が出るのが早いですね」という。「じゃあ、ひとつ暖めてる企画があるんで、近々台本を送りますよ」と答えて電話を切る。しかし、実はそんな企画なんてどこにもないのであった。しょうがない、言った手前何とかでっちあげるしかないなあ、と思いつつ、19:00〜、旧知の女優T嬢と数年ぶりで飲む。今年は久しぶりに年賀状のやりとりがあったので、旧交を温めることにしたのである。
会っていなかった空白の3年の間に彼女の周囲には実に波乱万丈な出来事が続発しており、一番驚いたのが、父親が突然家を出て行ったこと。そのため母親は半狂乱、家族は崩壊しかかったという。「母親ひと筋だった真面目な父親が、リストラされて人生の方向を見失い、求職中に偶然知り合った異国の女性と新生活を始め…」という、まるでドラマのようなお話。冗談めかして、「作品のネタで使ってもいい?」と聞くと、「モデルが特定できない範囲なら…」とのこと。何というタイミング。これぞ運命のお導きか??

 1月13日(火) そのネタいただきます

先日T嬢が話してくれた、父親の家出ネタをモチーフにした短編シナリオの執筆を開始。タイトルは「思い出す日のために」。ヒロインが家を出た父の元へ、彼氏の車で向かうあたりまで書き進める。

 1月14日(水) 一応脱稿

昨日に引き続き、「思い出す日〜」の執筆。勢いに任せて、一気にラストまで。400字詰め原稿用紙で60枚くらい。でも短編というには長すぎるかも。

 1月19日(月) 読み返してがっくり

数日寝かせて「思い出す日〜」を読み返してみるが、何か全体にいただけないムード。このまま撮ってしまうと、ほとんどT嬢の再現映像だ。エピソードは満載だが、芯のあるひとつのドラマとして成立していないのである。これではとても、他人様には読ませられない。

 1月20日(火) 改訂稿を書いて行こう(シャレです)

「思い出す日〜」の改訂稿に着手。冒頭からほとんど書き直し。最初のシナリオでは父が家を出ていくところから書いていたのだが、短編であることを考え、すでに違う場所で生活しており、郵便物を取りに戻って来たところから始めることにする。

 1月21日(水) ほぼ脱稿

引き続き、改訂稿の執筆。ほぼラストまで。タイトルを「いくつもの、ひとりの朝」に変更する。
ここのところずっと胃の具合が悪い。漢方薬と医者の薬のW攻撃をかけているのに胃酸がとまらないのだ。酒も控えているというのに…。

←ピロリ菌の殺菌効果があるというので、最近はココアを愛飲

 1月22日(木) 企画書も打ちました!

「いくつもの、ひとりの朝」準備稿完成。早速、企画書とともに小村氏に郵送。

 1月26日(月) あっという間に企画成立

昼過ぎ、小村氏から電話。シナリオを気に入ってくれたとのことで、早速もうひとりのプロデューサー浅野博貴氏と会う段取りをしてくれる。夜、乃木坂の事務所で浅野氏と会見。シナリオを読んでもらったところ、何とその場でGOが出る。この前小村氏と電話で話した日からたった2週間。これだけの日数で企画成立というのは、いくら短編とはいえなかなか珍しいのではないか。撮影時期はまだ未定だが、真冬の話なので、桜が満開になるまでには撮りたい、と希望を伝えておく。
今回の橋渡し役であった三本木さんにメールでことの次第を伝え、同時にカメラマンとして現場に入って欲しいと依頼。彼は仕事の疲れからか風疹にかかり静養中だったが即返事が来て、撮影の件も快諾を得る。エピソードを提供してくれたT嬢にも、メールで報告。あまりに速い展開に本人も驚いた様子(そりゃあそうだ)。でも、「どんな作品になるのかすごく楽しみ」との返事が来る。

 

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