03 間抜けハニー と フ大根?(3月)
    〜ピロリ菌ゲリラ討伐記〜


去年の今ごろの私は、慢性鼻炎による頑固な鼻づまりと果敢に戦いを繰り広げておりました。その時の涙ぐましい奮闘努力の模様は、03年3月の備忘録にも書いた通りです。で、1年後の今、私は慢性胃炎による胃のシクシクやムカムカ(痛みとは違うので、こういう風に表記するしかない)と日夜戦いを繰り広げているのです。まったくもってトラブルの絶えない肉体です。でも、こういうのも、グロデック的に言えば、「すべてエスのなせる業」なのでしょうか(「2003年、風邪と共に去りぬ」参照)。とにかく今月は、胃腸の弱い全国1千万の日本人の方のために、私がこれまで試した数々の健康食品、漢方薬などを一挙に紹介したいと思います(胃の丈夫な方にとっては、まるで別の世界の出来事でしょうが…)。

胃のもたれやむかつきがひどくなったのは今から10年ほど前。それほど暴飲暴食をしていたわけではないのですが、あまりにも具合が悪いので近所の内科医院に行き、弱った胃の粘膜を保護する薬(ノイエルなど)と出過ぎる胃酸を中和する薬(グルミンなど)、そしてガスターに代表されるH2ブロッカーといわれる胃酸分泌抑制剤をもらって服用するようになりました。4、5日飲んでいると治まってくるので、そうしたら飲むのをやめ、またひどくなったら飲む、で、薬がなくなったらまたもらいに行く、みたいなことを最近まで繰り返していました。途中で一度十二指腸潰瘍と言われた時がありましたが、その時も似たような薬で治した記憶があります。
しかし、去年の秋くらいから、そのシクシク、ムカムカが尋常でなくなり、いくら薬を飲んでも治りません。数少ない人生の楽しみであるお酒も全然飲めなくなり、このままでは生きていても苦しいことしか残らないので、本気になって治療に取りかかったわけです。

さて、胃炎の真の原因というのをご存知でしょうか。まあ、私もネットで得た知識なので、ひけらかすつもりもありませんが、ちょっと前まで胃炎にしろ胃潰瘍にしろ、その原因はストレスか暴飲暴食、あるいはアルコール、カフェインの過剰摂取と言われていました。しかし、このごろではさかんにピロリ菌原因説がささやかれています。正式名称はヘリコバクター・ピロリ。長期間に渡る胃炎と胃潰瘍の大半は、これが悪さをして胃壁を荒らし、さらに胃酸をこれでもかと分泌させる結果だとのこと。すなわち、この菌を胃の中から追い出してしまえば万事解決、ということらしいのですが、日本はどうしてこうチグハグなのか、現在の医療制度では、胃潰瘍の人にしかそのピロリ菌の除菌治療は保険適応されないというのです。つまり、私のような慢性胃炎の人間が除菌をしてもらおうとしたら、すべて自腹で医療費を負担しなければならないとのこと。そんなのやってられない、と思いつつ、除菌のことをもう少し調べてみると、成功率のデータはかなりまちまちで、除菌治療をさかんに勧める某胃腸科病院では90%の成功率を謳っているのに、他の研究機関によれば、半数以上が再発するとのこと。まあ、抗生物質を1週間飲み続けて除菌するっていう強引なやり方は、どうも無理があるように感じます。実際、そういった抗生物質に耐性を持った新しいピロリ菌が再び胃の中に繁殖する例もあるようですし、そうすればイタチごっこです。私は幼少期に風邪ばかり引いてその度抗生物質を飲まされ、歯の形成不全やらいろんな副作用が出たこともあるので、特に抗生物質には懐疑的です。化学的に作り出したもので自然界の物質をどうにかするという発想自体が、自然の法則に反していると思うのです。そこで、抗生物質にも西洋薬にも頼ることは一切やめ、漢方系、あるいは健康食品でピロリ菌を撃退する方法を探ることにしました。


 いろいろ試してみました!


便利な世の中になったもので、Googleなんかで「ピロリ菌 特効薬」などと検索をかければ、またたく間に何百件もヒットしてきます(実際はピロリ菌除菌の特効薬なんですけどね)。その中から実際に私が試したものを、以下、紹介していきましょう(エクスピロリや発酵キャベツなど、興味はあったものの試せなかったものも多数あります。それらはまたの機会に…)。


1)LG21
2000年に発売開始なので、かなりのロングセラーです。テレビでも白井晃やダンカンあたりがCMに出てました。「プロバイオティクス」なんていう言葉はこの商品から生まれたように思います。この後各社競っていろんな菌の入ったヨーグルトを出しましたよね。これなんかはGoogleで調べるまでもなく、当然発売当初から試していて、半年くらい真面目に食べ続けてみたのですが、結果は「?」でした。でも、効果があった人もいるんでしょう、あれだけ売れてるってことは(写真はドリンクタイプですが、メインはヨーグルトタイプ)。

明治乳業 LG21の効果についての講演


2)バリアケア (ライスパワーエキス101)
バイアグラと名前が似てますけど全然関係ありません。結果から言いますと、これ、かなり利きます。どれくらいピロリ菌を退治してるかは、この目で見たわけではないのでわかりませんが、たった一回飲んだだけで、はっきり胃のシクシクが低減しました。名前にある通り、原料はお米。その中の有効成分を抽出しているそうです。しかし、お米にそんなすごい力があるとは。ひとつ難点があるとすれば、やはりそれなりの値段だということでしょう(15本入りで4,500円)。

ライスパワープロジェクト


3)ミルクココア カカオ2倍
いきなり日常食ですが、森永製菓のニュースリリースによると、ココアに含まれているリノール酸とオレイン酸がピロリ菌殺菌に効果あり、とのこと。それ用の高い製品(インナーFFAカカオパウダー)も販売していたのですが、とりあえず市販品で様子を見よう、ということでこれ。一応カカオ2倍らしいんで。まあ、悪くはないような感じです。私はお茶だと飲み残すのことが多いんですが、ココアだと、結構すんなり飲み終えてしまうんですよね。

森永製菓 ココア家族


4)マヌカハニー UMF21.6
今回一番高かったのがこれ。マヌカという花の蜜は、驚くべき効果があるそうで、免疫力アップも期待できるとのこと。まあ値段も驚くほど高くて7,800円(プラス消費税)。かなりの貴重品なので、ココアにこれをちょっびとだけ入れて毎朝飲んでみたのですが、気分の問題なのか、それなりに作用しているような気もします。それにしても、このネーミング、どうしても「マヌケハニー」って言いたくなりますよねえ。実際のものも妙に粘り気があってスライムみたいにぬめえーっとして、結構間抜けな感じなのです。

マヌカ蜂蜜


5)いたわり茶(活性化フコイダン入り)
何か、シルバー世代向け飲料って感じのネーミングですが、これに入っているフコイダン(私は最初、フダイコンと読んでしまい、大根の一種が入っているんだと思ってしましました)というモズクの有効成分が、胃の粘膜を保護し、同時に、ピロリ菌に吸着して体外に排出するそうです。本当にそうなら大した優れものです。で、これについては、まだ数本しか飲んでないので、何ともコメントできません。きっと悪くないのでしょう。

ヤクルト いたわり茶


6)海洋パワー フコイダンヨーグルト
上と同じ、フコイダンが入ったヨーグルト。しかも沖縄産のサンゴまで入っています。まさに海洋パワー(ちなみに風化サンゴだそうです。そりゃそうでしょう)。これも、やはりまだ試したのが数個なので、評定できませんが、何しろフコイダンですから、きっと効果はあるのでしょう(でも、メーカーのホームページには、「本品は医療効果とは直接関係ありません」という妙に腰の引けたただし書きが…)。

協同乳業 フコイダンヨーグルト


以上、駆け足でピロリ菌征伐系の食品を見て来ましたが、これらと並行して、昨年も鼻炎でかかった東洋医学研究所で補中益気湯という漢方薬をもらって飲んでいます。その前には六君子湯というのを1ヶ月ほど飲んでいました。どちらも朝鮮人参配合で、胃炎や冷え性、虚弱体質などにいいそうです。食前に顆粒状の薬をお湯にとかして飲むのですが、空腹とともに出始めていた胃酸が一旦治まっていい感じになります。しかし、「補中益気湯」の方は時として肝機能障害のような深刻な副作用がある、という但し書きを読んで、ちょっとびびっているのですが(漢方薬も薬である以上副作用はあるわけです。自然界にあるものが原料だからと言って安心はできません)。

それでもって、肝心の現状ですが、まあ、具合の悪さのピークだった1月末と比べると、いくらか落ち着いて来たような気が…。まあ、昨年の鼻づまりの時もそうでしたが、本当にトラブルが深刻な時って、それについて書いたり話したりってできないですよね。そういう意味では、峠を越したといっていいんでしょうか。しかし、上に挙げたうちのどれが決定的に胃炎(ピロリ菌撃滅)に対して利いたのか、ということになると、かなり同時進行的に服用、ないしは飲用していたので、はっきり「これ」とは特定できません。まあ、激しく抵抗するピロリ菌ゲリラを、連合軍がどうにか制圧したってところでしょうか。

しかし、ここで話を「胃炎の真の原因」に戻しますが、今回の胃腸内テロが、果たして本当にピロリ菌のゲリラ活動によるものだったのか?という疑問は残ります。というのは、胃のシクシクが酷かった去年の秋から今年1月末までの数ヶ月は、実はある作品の製作がらみで、かなり深刻な問題を抱えている時期だったのです。その詳細はここでは省きますが、いろんな会社と企画を進めるうち、どんどん自分の思っているのと違う方向に話が進んでしまい、「こんな不本意な形ではやっても仕方がない」という気持ちと、「いや、今回はステップアップのために商業映画として割り切って撮るべきだ」という気持ちの間で揺れ続けてきました。その間胃の具合は最悪。そして、考えあぐねた末、やっぱり自分が納得できない形の作品は撮れない、という結論に達し、関わることになりかけていた会社すべてとサヨナラしたのが2月の初め。そのあたりから胃の具合はみるみる快方に向かっていったように思えます。

じゃあ、やっぱり原因はストレスじゃないか、ということになるのですが、まあ、ひとつの考え方としては、ピロリ菌というのは常在菌なのでだいたいいつも胃の中にいて、ストレスで胃が弱ると、「今がチャンス」とばかりに活発に動き始めるのだと思います。まさしく、市民生活にまぎれているゲリラのようなもので、社会の治安が維持されている時はおとなしくしていますが、一旦秩序が乱れると、その期に乗じて見境いなく破壊活動を開始するという…。人間の体というのもひとつの有機的なメカニズムなので、社会や国家に例えると、意外に説明がつくところがあるように思います。

まあ、物事の原因はひとつだけということはなく、内的なものと外的なものとが複雑に絡み合っているので、真犯人の特定というのは難しいのですが、今回に関する限り、やはり体が発する「警告」というか、いやもっと切羽詰った「悲鳴」のようなものだったと思っています。よくよくの時に体はそうやって脳に対し、救済を訴えてくるのでしょう。体に何かただならぬ症状が起きている時は、おのれの体の声に耳を澄ます必要がある、それを強く感じたこの数ヶ月間でした。

付記 上の話をふまえ、「体がそこまで嫌がっていることはやらない」という方針で、今後しばらくは行くことになると思います。先月のコラムなんかでも、相通じることを書きましたが、命をすり減らしてまでやらなければいけないことというのは、人生そんなに多くないのじゃないか、と最近は考えているので。まあ、命をかけてやるくらいでなけりゃあモノにはならん!という考え方もあるでしょうし、軟弱と言われても仕方ありませんが。このごろ印象に残っている格言に、「天は、その人が背負うことのできる重荷しかお与えにならない」というのがあります。タフな人、それほどでもない人、世の中いろいろいるわけで、まずは自分のキャパシテイを知って、その範囲で前向きに行動するしかないということだと思います。そんなわけで、最近とみに精神論に寄ってきていたタクラマ館主ですが、来月は何と、久々に作品を撮ることになりそうです。「いくつもの、ひとりの朝」という中短編で、大学生の女の子と家を出て行った父親の、温泉街での再会物語です。「身の丈にあった作品作り」をどこまで実践できるかが今回のポイントだと思っていますので、どうぞお楽しみに。
(2004/03/01)


コラムと旅行記へ
TOPページへ