火星のわが家 疲れたならば、休みにおいで
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(1999年/35o/104分) [スタッフ] 製作・監督・脚本・編集:大嶋 拓 撮影:芦澤明子 音楽:伊藤竜太 主題歌:「It's Time to Love」 詩・曲・歌:鈴木重子 製作:TAC 配給:武藤起一事務所 [キャスト] 神山未知子:鈴木重子 原沢久仁子:ちわきまゆみ 中島透:堺 雅人 神山康平:日下武史 |
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■第12回東京国際映画祭正式参加作品 |
ステージに立つと声が出なくなるという心の病を抱え、ニューヨークから舞い戻ったボーカリストの未知子。かつて「火星の土地」を分譲するなど夢多き人生を送ってきた父・康平は「人間の悩みなんて宇宙から見ればちっぽけなもんだ」と未知子を明るく励ますが、そんな康平が突然脳梗塞で倒れてしまう。未知子は帰国を延期して康平の介護に当たり、離れに住む司法浪人の青年・透も未知子に協力する。いつしか魅かれていく2人だったが、その一方、康平を介護施設に入れようとする姉・久仁子との確執もあらわになっていく…。
□出演者プロフィール □メイキングギャラリー
□日本宇宙旅行協会とは? □「火星のわが家」年代記 ※すべて旧サイトのコンテンツです




予告編
作り手のコメント
火星の土地の売買というのをご存知ですか? 今でもたまにテレビのバラエティや何かで興味本位に取り上げられるので、知ってらっしゃる方もいるかと思いますが、実際に1950年代後半にそういうトンデモ商売をやっていた団体があって、物好きなうちの父もその権利証を持っていました(10万坪で1000円だったそうです)。そんなことはすっかり忘れていたのですが、1996年くらいに、NASAが火星の石から生物の痕跡を発見し、それを受けて日本でも探査機が飛ぶことになってちょっとした火星ブームが起き、その時に火星の土地権利証のことを思い出したわけです。もし人類が本当に火星に行けたとしたら、その権利証で土地の所有権を本当に主張できるんだろうか? などと考えつつ、シナリオを書き始めたのですが…。
今顧みると、この作品は、自分なりの20世紀への葬送曲だったように思います。自分が育ってきた20世紀後半はまさにSFブーム真っ盛り。21世紀は科学万能の時代で、すべての夢が叶うように信じ込まされてきましたが、実際はそんなことはありませんでした。でもあの時代、未来という言葉はすごくまぶしかったし、宇宙旅行というのは、そんな輝かしい未来の象徴だったのです。「未来」を夢見て前向きで生きていられたあのころが、確実に「過去」のものになってしまったという喪失感は、恐らくあの時代を知っている人のほとんどが感じていることではないでしょうか。
この作品の舞台となった神山家は横浜市保土ヶ谷区の丘の上に実際建っていた一戸建てで、城井友治(木口和夫)さんという、鎌倉アカデミアでの父の教え子の方が住んでいらしたお宅を、無理を言ってひと夏お借りしました。築30年の生活感もさることながら、宇宙船のような丸窓がすごく素敵だったのですが、残念ながら作品の公開とほぼ同時期(2000年)に取り壊され、2007年にはその城井さんも亡くなってしまいました。劇中のセリフにもありましたが、広大な宇宙から見てみれば、われわれの存在など実にちっぽけで、はかないものです。
映画そのものは、表向きは鈴木重子さんのほわんとしたキャラクターのおかげで、至って穏やかな体裁を保ったまま流れていくのですが、全体を通して見ると、現代を生きるわれわれの無常観のようなものが、かなり濃厚に出てしまっているかも知れません。
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ビデオ発売:2000年9月22日 エースデュース DVD発売:2001年2月23日 エースデュース DVD(廉価版)発売:2006年3月24日 エースデュース |