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凍える撮影現場


先月はやはり1回お休みしてしまったこのコラム。どうしていたかというと、今年の初めから新作映画の準備と撮影にかかりっきりだったのです。1月いっぱいは撮影場所の下見やらシナリオの仕上げやら、製作上のもろもろに追われ、ほっと息をつく間もなく怒涛のようなロケに突入。2月の10日にクランクインして、初めの5日間は東京都内で場所を移動しつつ撮影、翌日から雪の降り積む長野に移動して、休みもなく8日間ぶっ通しで撮影、そしてまた東京に戻って1日だけ休んで、2日間撮影して、どうにかすべてが終わったのが2月の25日。実にまあ、密度の濃い2週間でありました。ハードスケジュールがたたったか、現場では撮影途中から風邪を引く人が続出、病院を借りて撮影したシーンでは、実際に出演者2人がその場で点滴を受けるなんていう一幕も。でも、大きな事故もなく無事に終わって、今は心底ほっとしています。

作品のタイトルは「凍える鏡」。では、気になるキャストさんのことを中心に、少しだけ内容もご紹介していきましょう。
ありのままの自分を愛せず、常に人より優れた存在であろうとして苦悶する画家志望の青年・瞬を演じるのは、若手俳優の中でも注目度上昇中の田中圭くん。圭くん自身の透明な存在感と瞬の持つ狂おしさは、最初は対照的なもののように感じていたのですが、撮影が始まってみるとそれが自然とマッチして、とても魅力的なキャラクターになりました。そんな瞬と知り合い、彼の危なっかしい行動に、つい手を差し伸べてしまう童話作家・香澄には、大ベテランの渡辺美佐子さん。渡辺さんのことは、「いい女優さんだなあ、うまいなあ」と以前から憧れていたので、今回ご一緒できてとても嬉しく思っています。役についての洞察も深く、現場でも「香澄ならこうするんじゃないでしょうか」といったご提案をいろいろとされ、演出面でも大変勉強になりました。そして、香澄の娘で臨床心理士の由里子に扮するのは、舞台や映画で幅広く活躍されている実力派、冨樫真さん。由里子は香澄の紹介で瞬のカウンセリングを担当することになり、彼に「自己愛性人格障害」の傾向があることを察知するのですが、次第に瞬に巻き込まれ、平常心を失っていきます。心を治療するプロフェッショナルであっても、一人の人間としてさまざまな悩みや葛藤を抱えて生きている、という「闇」の部分を、冷静さと熱情を合わせ持つ冨樫さんは巧みに表現してくれました。


左から圭くん、大嶋、冨樫さん、渡辺さん


世代も、おかれた環境も異なる彼ら3人が、それぞれの「自己愛」や「孤独」と直面しながら、物語はクライマックスに向かいます。雪に閉ざされた香澄の山荘で繰り広げられる、互いの魂をむき出しにするような3人の応酬は、自分のこれまでの作品ではあり得ない激しさに満ちた描写で、ある種の冒険だったと感じています。まあ、これ以上書くとあとの楽しみがなくなってしまうので、とりあえずはこのへんで…。
ほかにも、私の以前の作品で好演してくれた増沢望さんや加藤忠可さん、今回初めてご一緒する菊池隆則さんや下條アトムさんといった多彩なキャスト陣の出演シーンも注目です。3月からは気合いを入れ直して編集に邁進しますので、完成をどうぞお楽しみに!
(2007/03/01)

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