11 雨また雨の涙雨(11月)


この10月の雨量は、史上最多だったそうである。先月に続いての気象ネタで、もう史上最多とかそういうのはいいっ!と天に叫びたくなるこのごろ。10月の初めはまだ夏みたいに暑くてTシャツ姿で外に出てたのに、今じゃあコートにマフラーですっかり冬のいでたち。やはり日本には「二季」しかないのか!
こんな冷たい雨続き、しかも新潟ではあんな大きな地震まで起きて、被災地の方の身体的、精神的苦痛を思うと心が痛い。一瞬にして大事な家を失った上、この寒空の下、いつまでとも知れぬ避難所生活。天災は避けようがない、というが、どうも天の采配は、このごろちょっと判断ミスばかりしているのでは、と思えてならない。

中越地震とその余波で、どうにもやりきれない気分の時に、軽めのネタを書くのは気がとがめるのだが、これだけ雨が続く昨今なので、前々から気になっていた「雨男」「雨女」なるものについて今月は少し書いておこうと思う。
「雪男」や「雪女」はいるかいないか不明だが、雨男や雨女は存在する。これは科学的根拠はないものの、厳然たる統計的事実で、私はかなり強烈な雨男だと自負している。たしかドラえもん「雨男晴れ男メーター」というのが登場し、それで計るとジャイアンは最強の晴れ男(晴れ男度+10)、一方のび太のパパは強力な雨男(晴れ男度-8.5)で、彼がゴルフに行くととたんに天気が崩れて……みたいな話だったと記憶しているが、私の場合も、のび太のパパに引けを取らない(以下は最近の実例)。



 C・Wニコルの「アファンの森」見学会に出かけても…(10/03)



 溝ノ口に野外朗読会を聴きに行っても…(10/10)



思い返せば、今をさかのぼること数十年前、小学校の運動会(数回)や修学旅行(@日光)が雨に祟られたのを筆頭に、冠婚葬祭など、ここ一番という日に雨に遭う確率が極めて高い。しかし何より切実なのは映像作品の撮影で、作品の長短に関わらず、一度も雨に遭っていない作品がない、というくらいの凄まじさなのである。今ネットで公開中の「39−19」でも、それまで何週間も晴れ続きだったのが、プールのシーンを撮るという日に限って、今にも雨がパラつきそうな曇天。翌日からはまたいい天気なのだから手に負えない。そのあと信州にロケに出かけると、いきなり台風と衝突してこれまた大雨。ラストシーンを撮る日も朝から雨。とにかくそんなのばっかりなのである。学生時代に撮った「オン・アナザデイ」という作品では4回連続で撮影が流れたこともあるし、佐渡で撮った「湿った指」は、日本海側という不利な条件も手伝ってロケ中毎日きっちり雨。続く「チョコチップ漂流記」も、まあ梅雨の時期に撮っているせいもあるが、撮影日はことごとく雨。そのくせ中止にして帰ろうとすると日が差してくるといった具合で、意地悪をされているとしか思えない。同じことは「ナイト・フレエム」の遊園地ロケの時も起きているし(結局2回も現場に行っている)、どうひいき目に見ても、晴天とは相性がよくないのである。そして極めつけは、劇場公開された2本の映画で、2本とも、撮影した年そのものが記録的な冷夏「カナカナ」を撮った年なんか、あまりにも雨ばかりで、とうとう気象庁が梅雨明け宣言を撤回した、なんていうオマケまでついた(それも作品中にナレーションで入れて、「まぼろしの夏」なんてこじつけをしたが…)。「火星のわが家」の年の夏にしても、3日とおかず雨が降っていた印象が強い。このところ冷夏がないのは、私が劇場作品を撮らないからではないか、なんていう気さえしてくる(笑えない冗談だ)。

まあ、劇場作品とかOV(オリジナルビデオ)とかネット用とか、要は見せ方の違いであり、あんまり意識する必要もないのだが、とにかく、撮影に当たっていつも一番心配なのは、何よりまず天候のことなのである。そうそう、この春の「いくつもの、ひとりの朝」でも、天気予報を裏切って降り出した雨のせいで、大事な長野ロケが打ち切りになったんでした。うちの親は最近良寛和尚に凝っており、「災難に遭う時節には遭うがよかろう」の精神で、「雨が降ったら雨を撮ればよかろう」みたいなことを言うが、ドキュメンタリーならいざ知らず、ドラマはつながりってものがあるんだからそういうこと言ってられないんだってば! だから、ドキュメンタリーの方がいいなあ、雨振ってもそのまま撮ればいいんだから、と思っている部分もあるが…(でも雨天の撮影は大変。機材が濡れないように、とかもろもろ気を配ることが多くて)。

この「雨男度」なるものは、おそらく性格とか体質と同じく、遺伝学的に決定されていることだと思うので(ホントか?)、克服するのは難しいのだろう。となると、雨でも中止にならずにすむ台本を書くか(全編室内とか)、あるいは私の雨男度に匹敵する強力な晴れ男(晴れ女)を現場に呼び込むしかないということになる。ちなみに、こう書いてて思い出したのが「2000年のひとり寝」という中編で、それは私の現場でほぼ唯一、雨が一度も降らなかった作品である。ヒロインは藤原ヨシコ(現・よしこ)嬢。そういえば彼女は「手帳でゴー」という作品にも主演しているが、あの撮影も3日中3日ともピーカン(快晴)であった。もしかすると彼女はジャイアン並みの、かなり強力な晴れ女なのかも知れない。たしかに、雨の似合わないハレヤカ系のキャラではある。そうだったか。この先、雨が降って欲しくない現場を望む際は、是非彼女を…、と、言いたいところだが、それで役者さんを決めるってのもちょっと違うような気もするし。



 藤原嬢は強力な晴れ女か?(「手帳でゴー」より)



いずれにせよ、降り続く雨による土砂崩れなどの二次災害が起きないこと、起きても最小限ですむことを祈るばかりだ。科学は驚異的に進歩して、新しい生命の誕生などにも関与しようというのに、気象や天災に関してはいまだに予報すらままならず、最終的には神だのみというのが、何ともやり切れないところである。
(2004/11/01)


コラムと旅行記へ
TOPページへ