その五 河童の棲む淵?老女の口から出た言葉とは?(岩手・遠野)


            


かなりインパクトの強かった恐山での記憶も生々しいまま、次の目的地、遠野に向かいました。ここは「遠野物語」で有名な伝承民話の里。河童をはじめ、オシラサマ、座敷わらし、山男、天狗などの異形の者たちの故郷です。しかし残念ながら逗留時間が半日しかありません。この日の夜にはふたたび秋田に戻って飛行機で東京に帰らなくてはならないため、遠野には13時過ぎまでしかいられないのです。
そんなわけで、数ある遠野のスポットの中で、私が今回選んだのは、河童が住んでいたという通称「カッパ淵」です。まずはバスでの行き方を遠野駅前の観光協会で聞いてみたのですが、そこの窓口の案内嬢がけっこうキュート!だったので、帰りにもう一度寄って写真を撮らせてもらいました。でも、よく見るとこの子もちょっとカッパ顔??


  観光協会のカッパ子ちゃん(仮名)。とても親切でした


それはさておき、行き方をとても丁寧に教えてもらったというのに、またしてもバスの停留所を間違え、かなり行き過ぎて歩いて戻るハメに。雨の振る中とぼとぼ歩いていると、キリスト墓からの帰り道を思い出します。さて、到着しましたカッパ淵。そのすぐ手前にはカッパこま犬を奉った常堅寺というお寺もあります。なるほど、頭の上にお皿が…。


またしても雨。カッパこま犬のお皿にも… 雨水がたまってました。そりゃそうだ


カッパ淵は、じめっとして薄暗く(天気のせいもありましたが)、河童が水面から現れても何の不思議もなさそうな場所でした。でもまあ、さすがに本物にお目にかかれるとは期待してませんでしたが。


いかにもカッパが水からあがってきそうな雰囲気 といいつつこの橋は意外に新しかった。観光用?


カッパを祀った祠。ぽつんとあるところがいいね すぐ近くの神社の鳥居もナイスな古び方


そういえば、何年か前にNTVの「電波少年」のヤラセで、河童が見つかったというのが話題になったのもこの遠野だったなあ、などと回想していると、お堂の前の水辺で、一輪車(工事用です)を使って水汲みをしているおばちゃんと出会いました。いかにもこのすぐ近くに住んでいる農家の方です。おずおずと近づいて、
「あの、ここら辺に河童がいたって本当なんでしょうかねえ」
と聞いたら、なんと、
「ああ、昔はねえ。うちのじいちゃんも、子供のころ見たって言ってたから」
と、ごく普通のことのように答えてくれたではありませんか。
「え、ここら辺でですか?」
「ああ、この辺で」
「そのおじいちゃんていうのは…」
「ああ、今年90いくつで亡くなったんだけどねえ…」


 と、衝撃的な証言をしてくれた近隣のおばちゃん


残念。もう少し早く来ていれば生き証人の話が聞けたかも知れないのに。でも、そのおばちゃんの話では、明治時代ごろまでは、河童目撃談はこの辺ではそれほど珍しいものではなかったそうです。やはり、水木しげる大先生の著書にもあるように、文明の進出とともに彼方に追いやられていったのでしょうか。


さすがに遠野は民話のふるさとと言われるだけあり… 普通に歩いていても、はっとするような原風景が至る所に


帰りのタクシーで、運転手さんにその話をしたのですが、彼は地元出身の割には、その話を一笑に伏し、
「そんなもん、いるわけねえ。都会の人が喜ぶもんだから…」
と、完全に観光用のアイテムと考えているようでした。でも、私は河童に関しては、いたんじゃないかなあ、と何となく感じています。全国各地にある数多の目撃談、川や沼で引きづり込まれそうになったという話などなど、それらのすべてが見間違いや出まかせとはどうも思えないのです。霊魂の存在よりは河童の存在の方が信じられる、というのが私の正直な感覚なのですが、こういうのも人によってかなり違うのでしょうね。

ここからは河童とは話が変わりますが、少し時間が余ったので、カッパ淵近くの伝承園で時間をつぶしました。オシラサマが奉られているというのでそれを見て、初めてその成り立ちを知ったのですが、かなり衝撃的な物語でした(「遠野物語」第69話)。


 この馬とこの少女が毎晩…。子供に聞かせていいのか?


なんと、農家の美しい一人娘が、飼っていた馬と恋に落ち(え?)、毎晩馬屋に行って一緒に寝るようになり(おいおい)、ついには体型の違いも克服して夫婦になったのですが(おいおいおい)、父親がそれを知って怒り狂い(そりゃそうだ)、その馬を殺して木につるしておいたところ、娘はそれを見て嘆き悲しみ、つるしてある死体に抱きついたので、父親が「お前はまだ懲りないか!」とその馬の首を切り落としたら、娘はその首をつかんだまま天にのぼっていき、それで神様(オシラサマ)になりましたとさ、という話。しばし呆然、て感じですよね。どうしたらこんな話を考えつくのか、昔の人の発想ってのもすごいです。実際にいたんでしょうかね、馬に恋した少女…。今これをネタにしたら絶対キワモノAVにしかならんでしょうねえ。
(2004/07/13)


行き方:JR遠野駅からバスで約20分、伝承園下車。カッパ淵、常堅寺はそこから徒歩5分


 おみやげはカッパと一緒に一杯やれるぐい呑み。結構お気に入り

おしまい


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