07 さらばDVD!(7月)


どうにかこうにか「水のほとり/実験室」のCD/DVDが発売になった。先日、新宿のTSUTAYAで、邦画新作コーナーに4本並んでいるのを見て、ようやくほっとしたところである。でもまあ、他の作品のど派手なパッケージと比べると、わが新作は、いささか上品過ぎるというか…。今回の文芸作品ぽいデザインは、私としてはかなりのお気に入りなのだが、生き馬の目を抜く(?)レンタル市場では、パッケージのインパクトが強く、手に取ってもらったもの勝ちなので、そういう意味ではこのおとなしいジャケットは分が悪いのかも知れない。でも、絶対損はさせない中身なので、是非レンタルでもご利用下さいませ。(もちろん、販売もやってます)。


 ジャケットは、声がセクシーなデザイナーI・S嬢の力作


さて、DVDが発売になったばかりの今、何で「さらば、DVD」なの?と思われるかも知れないが、言葉の遊びでも逆説でもなく、ソフトとしてのDVDの発売日わずか1日前に、ハードとしてのDVD(要するにDVDの録画再生機)は私の元を去っていったのだ。7月1日現在、わが家にDVDの機械はない。したがって、うちでは今「実験室」のDVDが鑑賞できないのである。一応発売元なのに!(※だいたいの方は気づいていると思いますが、今回の発売元のタクラマカンパニーというのは私の個人事務所で、自宅も兼ねております)

どうしてそういうことになったのかというと、もともと、昨年秋に亡父の生誕百年のCDとDVDを作ろう!と決めるまで、私のところにDVDはなかった。「カナカナ」とか「火星のわが家」なんかは数年前にDVD化されていたが、その際も特に機械を購入することはしなかった。したがって自分の映画も他の映画も、それ以外のソフトにしても、とにかくDVDを見るという習慣はまったくなかったのだ。何故と言われても困るが、まあ画質とか音質にそれほどこだわりがある方ではないので、まだ当分はVHSで充分だと思っていたのだろう。
でも、ここ1〜2年、昔ハマった特撮ものが続々とDVD化されているのを見て心が徐々に動き、そして、自分のところでDVDを作るのにDVDを見られないというのは人道的(?)に問題だろう、という考えも手伝って、忘れもしない昨年11月3日の文化の日、新宿のYカメラでV社製のハードディスク内臓型のDVDレコーダーを5万いくらというリーズナブルな価格で購入したのである。

ところがこれがとんでもない問題児で、購入後わずか数ヶ月でHDDがおかしくなり、何かのはずみに突如フリーズ状態電源が切れる、という不具合が頻発するようになった。価格コムなどネットで情報を集めてみると、同型機で同じような不具合がかなりの数報告されている。「そうか、それであんなに安く売っていたのか」と納得したが、それほど使っているわけでもないのに止まってばかりではしょうがない。メーカーに返品を申し出たところ、一度は修理させてくれ、というので出張修理を頼んだが、HDDともうひとつの基盤を交換しなくてはだめと言われ、そうなると当然、HDDに撮りためた画像はすべて消えてしまうことになる。まあ、返品覚悟で頼んだ修理なのでそれは仕方ないのだが、HDDと基盤を変えても同じような症状が再発したという情報もあったし、それ以上に、そういう不良品を知らん顔で売り続けていた企業体質には納得が行かず、HDDの画像をこちらでDVやVHSにコピーし終えた後で返品すると申し出た。メーカー側もしぶしぶ了承、そして、データのコピーがあらかた終わった6月23日、その問題児DVDはメーカーに回収されて行ったのである。


 わかりづらいけど、ダビングしているところ


しかし、そのV社というのは決して劣悪な商品を作り続けてきたメーカーではなく、むしろその逆で、私などはここ十数年来、ビデオデッキもテレビも、ほとんどそのメーカーのものを購入していたのである。記憶をたどれば、ビデオデッキ3台、ビデオカメラ2台、テレビが2台。こう書くとかなりのお得意様だ。価格は比較的安く、それでいてそこそこ安定した商品、というのが私の抱く、これまでのV社のイメージであった。
ところが今回は、商品もダメなら、それにまつわるサービス窓口の対応も首をかしげるものであった。出張修理に来た担当者も、以前何度かビデオデッキの修理に来てくれた人とは違いどこか投げやりで、「今までこれだけそちらの商品を使ってきたけど、こういうことはなかった」と言っても、「はあ、そうですか」とひとごとのよう。自社製品に対する自信と愛着がほとんど感じられないのだ。そして、返品する日も、彼は玄関先に現れるや現金をこちらに手渡し、そばに置いてあったDVDを乱暴につかむと、もうこれ以上話すことはないだろうとばかり、そそくさと去って行った。その間わずか二十秒。ただただ呆気に取られるばかりである。こちらとしては、問題児とはいえ、半年使ってそれなりになじんで来ていたレコーダーである。本当はその日、引き取ってもらうに当たり、「今回は残念なことになったけれど、本来V社は好きなメーカーでもあるので、きちんとした信用のおける製品を作ってくれるようになれば、またその時は購入したいと思っています」と彼に言おうと思っていたのだ。でも、そのサービスマンには、「もうこれ以上クレームを聞くのはうんざりだ。金を返したんだから文句はないだろう」という態度が露骨に現れていた。企業体質というのはこんなところにも出るものなのだろうか。

しかし、今回のようなトラブルは、何もV社の製品に限らないのだろう。昨今の家電製品は昔に比べ、総じてかなり壊れやすくなっているように思う。デジタル化している分、昔より作りが繊細だとか、パーツが一体化しているため、部分修理ができないだとか言っているが、要は耐用年数を減らして消費者にどんどん買い替えをさせようというメーカーの、というより資本主義の原理がそこに働いていることは言うまでもない。そう考えると今はほぼすべてのメーカーがそうした原理の元で商品を世に送り出しているのだから、どこのメーカーを買えば安心、ということはないのだろう。社会の仕組みでも変わらない限り、粗製濫造の製品ははびこる一方、ということだ。いやはや…。私のところも、いつまでもDVDなしというわけにも行かないので、そろそろまた購入を考えなくてはいけないのだが、半年で引き取られて行ったあの問題児の末路を思うと(多分ジャンクなんだろうな〜)、安易に次を買うことには、どうも積極的になれないのである。
(2005/07/01)



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